会社の知識をAIに覚えさせるときに一番効いたのは、資料の量ではなく、「なぜそう判断するのか」という判断基準を残すことでした。私の場合、置き場所がNotionからClaude CodeやObsidianへ変わっても、使う場面を先に決め、小さな成果物を出してから足りない情報を足す順番がうまくいきました。
この記事は、美容室Ponoを複数店舗経営し、小さな会社のAI活用をサポートしている私(Mogi)が、2026年5月31日から100日間AIを実務で使った記録と、その後の運用をもとに書いています。プロフィールはMogiについてにまとめています。
会社の知識をAIに覚えさせるとは、どういうことか
会社の知識をAIに覚えさせるとは、毎回ゼロから会社のことを説明しなくても、AIが会社の情報や考え方を参照して答えたり、資料や記事を作ったりできる状態にすることです。
始めたころの私は、AIに相談するたびに、自分がどんな人間かをゼロから伝えていました。2026年6月7日にClaudeのプロジェクト機能を調べたとき、自分のことを知っている相手に相談する方が話は早い、と気づいたのが出発点です。
私は、AIに残すものは大きく2種類あると考えています。
- 情報:メニュー、薬剤、マニュアル、過去の資料など
- 手順と判断基準:よくやる仕事の進め方と、迷ったときに何を優先するか
手順と判断基準を繰り返し使える形にしたものが、Skillです。Skillは、よくやる仕事の手順や判断基準をAIに渡しておく仕組みで、毎回ゼロから指示を書かなくても同じ水準で進めやすくなります。
「AIで第二の脳を作る」とよく言われますが、7月7日に判断基準を入れていたとき、私が作っていたのは個人の記憶の置き場ではなく、会社そのものを未来へ残す仕組みだと感じました。
知識を残す道具ごとの役割(Notion・NotebookLM・Claude Code・Obsidianなど)
| 道具 | 入れているもの・使い方 | 始めた時期 | 記録 |
|---|---|---|---|
| Notion | 積み上げリスト、思考ログ、AI壁打ちログ、資料ライブラリ | 2026年5月〜6月 | Day1・Day4・Day5・Day9 |
| Google Drive | 経営、AI・学習、Ponoなどの階層で資料を保管 | 6月 | Day6 |
| NotebookLM | 研修やカウンセリングの動画・資料。テーマ別に約13個のノートブック | 6月〜7月 | Day12・Day16・Day40 |
| ChatGPTのプロジェクト | 経営戦略、集客、採用、教育などテーマ別にチャットを整理 | 6月 | Day20 |
| Claude・Claude Code | Ponoの技術と判断基準を入れたAIワークスペース | 7月 | Day39・Day43・Day45 |
| Obsidian | AIとの対話や記録を、Markdownのファイルとして手元に残す | 7月 | Day46・Day47 |
| Skill | よくやる仕事の手順と判断基準 | 7月〜 | Day37・Day86 |
会社の知識をAIに残すまでにやった6つのこと(2026年6月〜10月)
1. 会話と資料の置き場所を作った(6月)
知識づくりは、AIとの会話が増えて「あの話どこでしてたっけ?」が起きたことから始まりました。Notionに「AI壁打ちログ」を作り、Google Driveを役割ごとに整理し、資料ライブラリにはカテゴリー、形式、活用先、状態を付けました。
6月1日には、自分の価値観をまとめた文書をNotebookLMに読み込ませています。返ってきた答えに「そこは少し違うな」と思う部分がありました。経験や失敗談までは読み込ませていなかったからです。渡していないことは、AIも答えようがありません。
2. Claudeに「判断基準」を入れた(7月7日〜11日)
7月7日は、作業時間だけで5〜6時間、途中でClaudeの利用上限に達するほど、Ponoの情報を入れました。カウンセリング、メニュー、技術基準、NG基準、薬剤選定、ブリーチ対応、髪質改善、縮毛矯正、アイロン技術、施術思想、同時施術ルールの11分野です。
入れていたのは、薬剤の知識だけではありませんでした。「この薬剤を使う」ではなく、「なぜ、この薬剤を選ぶのか」「どんな場合は選ばないのか」「何を優先して考えるのか」です。技術は真似できても、判断基準は簡単には真似できません。
7月11日には、すでにある社内の資料をそのままClaudeに読み込ませました。一から説明し直すより効率的で、Claudeからの追加の質問に答えることで、資料にない判断や例外の対応が少しずつ補われていきました。AIに正解を作ってもらうというより、対話を通して自分たちの基準を見つけている感覚でした。
3. 使い道から逆算して作り直した(7月13日)
7月13日、大きな失敗に気づきました。Claude Codeで作っていたワークスペースに情報を入れることが目的になり、最終的に誰がどう使うのかを後回しにしていたのです。ファイルがどこに保存され、どんな構造になっているのかも、私自身が十分に理解していませんでした。
ワークスペースは、今の女性向けのサロン、将来のメンズサロン、両方に共通する技術の考え方、ブランドごとに違うメニューや判断基準を分けて扱える構造に作り直しました。深い症例の入力は、今の優先順位ではないと判断していったん止めています。
4. Obsidianで、複数のAIから同じファイルを使えるようにした(7月14日〜15日)
7月14日にObsidianを入れ、AIとの対話を「その場で終わる会話」から「あとで使える知識」に変える場所にしました。Obsidianは、ノートをローカルのMarkdownファイルとして管理します。
7月15日、Codexの設定をしたとき、Claude Codeで作ったローカルのワークスペースをCodexからも開けました。特定のAIの中に閉じるのではなく、自分が持っているファイルを中心に、複数のAIを使い分けられる形に近づきました。
5. 使いながら、足りない知識を足した(7月〜8月)
7月16日、Claudeのワークスペースからブログ記事を作ったところ、オリジナルシャンプーの全成分がナレッジに入っていないと分かりました。以前、主要な成分だけで十分と判断していたからです。当時の目的ではそれで十分でしたが、使い方が増えると必要な情報も変わります。使う、不足が見つかる、追加する、また使う。この繰り返しでナレッジを育てると考えるようになりました。
8月には、ChatGPTが実際のスライドタイトルを知らずにズレた案を出したことがありました。8月3日からは、Claude Codeにある実際のデータを正解として渡す形にしています。
6. 繰り返す仕事をSkillにし、失敗も残した(7月〜10月)
7月5日にClaudeのSkillを6個作り、8月23日には「今日の投稿を作成して」と言えば、投稿に使うブログ記事の選定から投稿文の作成まで進むSkillにしました。選び方は、3つのテーマの中から未使用の記事を、新しい順に、同じテーマが続かないように使う、というルールです。
2026年9月には業務Skill 15本の役割を整理し直し、Claude CodeとCodexの入口が同じSkillの実体を使う形にしました。10月9日には、Obsidianの中に実務の失敗や判断を残すフォルダを整えました。残すかどうかは「次に同じ作業をするAIに、これを読ませたいか?」で決めます。10月20日時点で、繰り返し使うルールが11本、出来事の記録が4本あります。
知識を残して変わったこと
- 会社の情報を入れたClaudeのワークスペースで、テーマの整理から構成、表現の調整までブログ記事を作れるようになった
- 話した内容を要約せず原文のまま渡し、既存の型で作ったところ、教育資料12枚がほぼ一発で完成した
- 2026年8月16日、トークマニュアル20本を横断し、2つの新しい接客の場面で試したところ、どちらでも「状態確認 → リスク判定 → 今回できる範囲 → 理由を説明 → 選択肢・代替案 → お客様と一緒に決定 → 今後の計画」という共通の流れが再現できた(まだ成功パターンの候補の段階です)
- 投稿に使う記事の選定までSkillに任せ、「どの記事を使ったか」の確認がかなり減った
知識をAIに残すときにつまずいたこと
- 入れることが目的になる:情報を入れ続けても、完成形が見えないままになりました
- 作った本人(私)が構造を分かっていなかった:ファイルの場所や構造を確認し直す必要がありました
- 要約すると大事な部分が消える:要約では、細かなニュアンスや理由、判断の感覚が削られていました
- AIごとに持っている情報が違う:どの情報を正解として扱うかを決めないと、出力のズレを人が毎回照合することになります
- 本人の評価とAIの解釈を混ぜない:2026年8月のシャンプーのレビュー(10商品)では、私が言った評価とAIが音声から解釈した値を別の欄に分け、言っていない項目は「未評価」のままにしました
- アクセスの範囲を決める:必要なファイルや作業だけを許可し、重要な登録や送信は自分で確認しています
自分の会社の知識をAIに残す手順(6ステップ)
- 使う場面を1つ決める。新人向けの確認シート、ブログ記事、カウンセリングマニュアルなど、最初に出す成果物を決めます
- 今ある資料をそのまま渡す。そのうえでAIに質問してもらい、資料にない判断や例外を答えて足します
- 「なぜそうするか」「どんな場合はしないか」を残す。手順だけでなく、判断の理由を言葉にします
- 話した内容は原文で残す。要約は別に持ち、原文の代わりにしません
- 正しい情報の置き場所を1か所に決める。複数のAIを使うときは、どこを正解とするかを決めます
- 繰り返す仕事はSkillにする。手順と判断基準を渡しておけば、毎回同じ説明をせずに済みます
Claude Codeを業務で使う流れは、非エンジニアの経営者がClaude Codeを業務で使って分かったことにまとめています。
関連する100日の記録
- Day9|足るを知る:Claudeのプロジェクト機能を調べ、資料ライブラリを作った日
- Day39|AIは”第二の脳”ではなく、会社の心臓になり始めた。:Claudeに11分野の判断基準を入れた日
- Day43|AIは、単体の賢さより「つながり方」で価値が変わる:既存の資料をそのまま読み込ませた日
- Day45|入れる前に、「どう使うか」を決める:ナレッジの設計を使い道から作り直した日
- Day46|考えるだけで終わらせないために、「積み上がる場所」を作った:Obsidianを始めた日
- Day47|AIを「持ち歩く」ための設定が終わった日:Claude CodeとCodexで同じファイルを扱えるようにした日
関連ガイド
- 非エンジニアの美容室経営者がClaude Codeを業務で使って分かったこと
- AIで定期実行・自動化している業務|美容室経営者が自動化の前に決めたこと
- 小さな会社のAI導入は何から始める?最初の1か月でやったことと順番
- 小さな会社のAI活用ガイド(テーマ一覧)
よくある質問
Claude CodeとObsidianを組み合わせると、何ができますか?
私の場合、AIとの対話や会社の知識をObsidianにMarkdownのファイルとして手元に残し、Claude CodeやCodexから同じファイルを扱えるようにしています。2026年10月9日からは、実務の失敗や判断も「次に同じ作業をするAIに、これを読ませたいか?」で選んでObsidianに残しています。Notionは、積み上げリストやSNSの更新記録のように、記録して数や状態を見るデータベースとして使い分けています。
Claude CodeのSkillとは何ですか?どう作りましたか?
Skillは、よくやる仕事の手順や判断基準を、AIに渡しておく仕組みです。私の場合、「今日の投稿を作成して」と頼むだけで、記事の選定から投稿文の作成まで決めたルールどおりに進みます。2026年7月5日にClaudeでSkillを作ったときは、高性能なモデルに丸ごと任せて利用量を90%近く使ってしまったため、自分で作ってテストし、最後の仕上げだけ高性能なモデルに任せる流れに変えました。
会社の知識を残すのは、NotebookLMだけでは足りませんか?
私はNotebookLMを、学びや社内資料をテーマ別にまとめ、要約や音声解説で理解する場所として使っています。会社の判断基準を参照してブログ記事を作る作業は、Claude側のワークスペースで行いました。
会社の知識をAIに入れるのに、どれくらい時間がかかりますか?
判断基準を入れた2026年7月7日は、作業時間だけで5〜6時間かかりました。ただ、一度で完成させる必要はありません。使って不足が見つかったら足す前提で進める方が、私には合っていました。
エンジニアでなくても、会社の知識をAIに残せますか?
私はフォルダやターミナルに苦手意識があり、Claude Codeを本格的に使ったのも2026年7月が初めてでした。作ることはできましたが、ファイルの場所や構造は、自分でも一つずつ確認しておく必要がありました。
会社の情報をAIに反映するところから、一緒に進めたい方へ
1日集中・自社専用AI構築サポートでは、会社の情報や経営者の考え方を整理し、AIが参照できる形にして読み込ませます。一人では後回しにしがちなClaude CodeとCodexの初期設定も、その場で一緒に進めます。
自分の会社の知識を、AIが使える形にしたい方へ
会社の情報整理からAIの初期設定まで、1日で一緒に進めます。
次にできること
- 実例を読む:実践事例、AI実践記録(Day1〜100)
- サービスを知る:何から始めるか・業務の整理からなら個別サポート、AI環境づくりとSNS・ブログの制作を1日で進めるなら1日集中・自社専用AI構築サポート
- 相談する:公式LINEから無料個別オンライン相談をお申し込みください。日程はLINEで個別に調整し、30〜45分ほどのオンライン相談で、合うプランと内容・料金をご案内します